彼女は実は男で溺愛で

 食べ終わると、勧められるまま入浴を済ませ、ベッドに横になった。
 昨日みたいに眠くなればいいのに、今日はどうしてか眠ろうとすればするほど、目が冴えてきてしまう。

 彼が寝室に入ってきた気配を感じ、ギュッと体を縮こませる。
 恥ずかしくて、彼の入る側に背を向けて丸まる私を、彼は後ろから包み込むように抱きしめた。

 彼の匂いと温もりを感じ、胸が痛いほど鳴いて、鼓動が速まる。

「俺、たぶん史ちゃんが思っている以上に、面倒なものを抱えているから」

「え」

 思わぬ告白に息を飲んだ。

「だから、こんな風に、恋人を腕に抱いて眠れる日が来るとは思わなかった」

「わ、私は夢見ていて。いつか私もって」

 優しい微笑みをこぼす彼が「それが俺で嬉しい」と囁いた。

「さあ。明日も早い。眠ろう」

 拍子抜けする言葉を聞いて、つい本音を漏らす。

「寝るんです、ね」

「うん。誘惑しないでね」

「し、しません!」

 彼はそこから本当に眠ってしまったのか、私も知らぬ間に眠っていた。
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