彼女は実は男で溺愛で

「あなたは販売促進の方が、向いているのかもね。課長に進言しておくわ」

「え、あの」

「自分に向いていると思う仕事を望むのは、悪いことじゃないわ」

 彼女は再びパソコンに向かったけれど、私の胸には温かい気持ちが広がっていた。
 それと同時に寂しい気持ちにもなる。

 本当にもう、村岡さんも含めた柚羽と私の3人で、お弁当を食べられないのかな。

 お昼になると村岡さんは早々に席を立ち、少ししてから柚羽が来た。
 表面的には、普通の表情に見える。

「お昼行こう」

「うん」

 歩き出す柚羽に向かって「あの、柚羽?」と、後先考えずに声をかける。

「ん? なに?」

 なんて言えばいいの?
 柚羽はいい子だから、すぐにいい人が現れるよ?
 だから、村岡さんとも仲良くしようよ?

 頭をグルグルさせていると「史乃、変だよ」と苦笑する柚羽が再び歩き出す。
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