彼女は実は男で溺愛で

 けれど、柚羽は笑っている。

「見る目はあるから大丈夫です。この会社に来てから、いい人だなあって思ったのは、染谷さんに佐竹さん。ハズレなしで、友達の彼氏って、すごくないですか?」

「わっ、私は彼氏だとは」

 慌てて手を左右に振ってみても、柚羽は取り合ってくれない。

「隠さなくてもいいの。バレバレだから」

「そうね。昨日も今日も、コンビニ弁当で。男物のシャンプーの香りまでさせて。染谷さん家に、お泊まりでもしたの?」

 村岡さんの鋭い指摘に顔がカッと熱くなって、誤魔化しようがない。

「うそ〜! お泊り!? いいなあ」

 そこから何故か私がからかわれる標的にされ、根掘り葉掘り聞かれる羽目になった。

 染谷さんに言われた「部外者がなにか言ったところで、仕方ないよ」という言葉が頭を過ぎる。
 心配なかったどころか、今は助けてほしいくらいだ。

 でもよかった。
 また、これからも2人と仲良くできそうで。

「染谷さんって、どうなの?」

「どうって」

「優しいの? 激しいの?」

「ハゲ……。え?」

 彼は常に穏やかで優しい。
 そのことを言われていないのは、柚羽の弓形になっている目を見ればわかる。
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