彼女は実は男で溺愛で

「そうね。染谷くんって、謎が多いから興味あるわ」

 まさかの村岡さんまで話に乗ってきて、私は言葉を詰まらせる。
 その間に、2人は勝手に盛り上がっている。

「染谷くんって親しげですね」

「同期なのよ。彼も含めて」

「わあ、羨ましい」

「そうでもないのよ。普段は染谷さんと呼ぶようにしているくらい、面倒に思っているわ。で、市村さんは染谷くんと、どうなのよ」

 忘れていてくれた方がありがたいのに、ご丁寧にまた話題が戻る。

「その、優しいです。けれど」

「けれど?」

「2日お泊まりして、その、キス以上ほぼなにもないのは、やっぱりおかしいですよね」

 思い切って打ち明けた内容に、村岡さんは目を見開いていて、柚羽はキャーの顔をさせ、口元に手を当てている。

「いや、あの、今の聞かなかったことに」

「無理ね。染谷くん、見た目通り草食なのね」

 わっ。染谷さんのイメージが。
 勝手に話して申し訳ない。

「紳士だから、待ってくれているんじゃない? 史乃、慣れていなさそうだもん」

「それは、そうお伝えしました」

 どうして敬語なのか、なんとなく打ち明ける内容が話づらくて、おかしな口調になってしまう。
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