彼女は実は男で溺愛で

「私『あなた』じゃなくて、平林柚羽です」

「そう。失礼したわね。平林さん」

 それだけ言うと、村岡さんはお弁当を片付け始めた。
 その村岡さんに向かって、柚羽は話し出す。

「私、佐竹さんに恋人がいるって知った時よりも、村岡さんが私に言ってくれなかった事実の方がショックでした」

 村岡さんは黙っている。

「でも、あそこで佐竹さんの恋人は自分だと、打ち明けてくれた村岡さんがやっぱり好きなんです」

「ごめんなさい。私、女性は対象外なの」

「もう! 史乃も、村岡さんも、なんなんですか! 私、ちゃんと異性が好きです。2人とは友達になりたいだけです!」

 フッと、ただ息を吐いただけかもしれない。
 けれど、確かに村岡さんが笑った気がした。

「そのくらいの熱意で、離したくない男性も現れるわよ」

 それだけ言い残し、村岡さんは会議室を出て行った。

 私たちは顔を見合わせ肩を竦めると、それからお弁当を片付け始めた。

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