彼女は実は男で溺愛で

「ごめん。私、なにもできなくて」

 堪えきれなかった思いを吐露すると、柚羽は明るく言う。

「控えめなところが史乃のいいところじゃない? 昨日、放っておいてくれて助かったもの」

「私は、なにもできなくて。不甲斐なかったよ」

 力なく言うと、柚羽はふふふと笑う。

「そういうところ。控えめだけれど、流されるわけでもないというか。私は史乃の存在にすごく助けられたよ。きっと村岡さんも」

「村岡さん?」

「うん。だって面倒くさい女友達なら、私に加勢して「柚羽が可哀想! 謝ってください!」くらい言いそうだもの」

 柚羽は肩を竦め、嫌そうな顔をする。
 そういう体験をしてきたのかもしれない。

「あ、お昼休み、終わっちゃう。史乃、村岡さんに目くじら立てられるよ」

 私は思わず吹き出して「本当、急がなきゃ」と言い、柚羽と顔を見合わせて笑った。
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