彼女は実は男で溺愛で

 見慣れた自分のアパートにホッとするものの、寂しさを覚える。

 悠里さんに会いたいなあ。

 不意に浮かぶ、自分の気持ちに苦笑する。
 まだ、半日くらいしか空いていないのに。

 電話が鳴り、確認すると悠里さんだった。
 気持ちが通じ合っているみたいで、胸が高鳴る。

「はい。お疲れ様です」

「お疲れ様。アパートに帰ってもいないから、寂しかったよ」

 悠里さんの言葉にキュンとして「私も会いたくて、寂しく思っていました」と本音をこぼした。

「それなら早くおいでよ。どこにいるの?」

「アパートの冷蔵庫の整理とか、あとは着替えも」

「うん。そっか」

 お互いに話し出すのを待つような、僅かな沈黙。
 その沈黙さえも愛おしくて。

「途中まで迎えに行くよ」

「いえ。そんな。だって、悠里さんのアパートに行くのに」

「うん。でも早く会いたいんだ」

 耳元で聞こえる甘い声。
 私は顔を赤くさせながら「私もです」と応えた。
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