彼女は実は男で溺愛で

「なに、しょげた顔してるの。このくらい悠里が買ってくれるわよ! ねえ、悠里」

 突然、話を振られ、咳き込んだ悠里さんと目があった。
 私は慌てて手を振り、お断りする。

「い、いえいえ。そんな、ほぼ初対面なのに、ここまでしていただいて、これ以上は」

 私が恐縮していると、穏やかに微笑んだ悠里さんが私に歩み寄って頭を撫でた。
 彼女の上品でエレガントな匂いが、鼻をくすぐる。

「可愛い後輩の入社祝い」

「え」

 見上げた先の悠里さんは、目を細めて続けた。

「入社祝いにプレゼントさせて」

「そ、そんな、いただけません」

 即答した私の唇に、そっと悠里さんの人差し指が触れ、ドキリとする。

「素敵なレディは、厚意を断らないものよ」

 思わず見つめ合い、女同士なのに頬を染める。
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