彼女は実は男で溺愛で

 私は重ねている手に、ギュッと力を込めた。

「今、聞きたいです」

「史ちゃんは、もう俺と肌を重ねたくはないのでしょう?」

 ドキリとして、彼の伺うような眼差しを見つめる。

「ごめん。責めたいわけじゃない。それだけが全てではないのだし、俺は史ちゃんが傍にいてくれれば、それだけで」

 私は彼の体に寄りかかるように体を傾けると、彼は私を受け留めた。

「私、悠里さんとの、その、過ごした夜は恥ずかしかったですけれど、幸せを感じていました」

「うん」

 優しい彼の相槌に、私は思いをこぼした。

「それなのに、親の話を聞いてしまって、なんだか、不潔!って」

「思春期の女の子みたいだ。「お父さん不潔!」って史ちゃんみたいな娘に言われたら、立ち直れないな、俺」

 思春期の女の子……。

「私、反抗期、なのかな」

「ごめんごめん。そんなつもりじゃないよ。俺もそうだったけれど、史ちゃんも自分と親は別だって思えたら、楽になるんじゃないかな」

「それはそう思おうって、思ってはいるんです。母の幸せは別にあるって」

「うん」

「もう眠ろうか」と促され、寝室に向かう。
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