彼女は実は男で溺愛で
「はい。じゃ決定ね。さあさあ、私は次の予約も入っているから。急いで裏から出て行って」
既に用意されていた紙袋を手渡され、追い出されるように部屋から出た。
入り口とは別の扉があり、来た時とは別の通路に出された。
「不思議な、部屋の造りですね」
「まあ、下着を試着室で着ているって、見られたくない人もいるじゃない? その配慮ね」
説明してくれる悠里さんに、慌てて頭を下げる。
悠長に、部屋の感想を述べている場合じゃない。
「あ、あの。すみません」
頭を勢いよく下げると、悠里さんが指摘する。
「『ありがとう』の方がいいわ。下着の件だったらの話だけれど」
「あ、ありがとうございます」
「はい。どういたしまして」
悠里さんは頬を緩ませ、嬉しそうな顔をしている。
本当に厚意として、受け取っていいのだろうか。
グルグルと頭を悩ませていると、悠里さんは付け加えるように言った。
「毎日、着るのは大変だと思うけれど、それを頑張って着てくれるのが一番嬉しい」
今さら断る方が失礼だと思い、私は力一杯に「毎日着ます! 頑張ります!」と答えた。
「そう。じゃ明日も同じくらいの時間に、里穂のところで待ち合わせしましょうね」
「はい!」