彼女は実は男で溺愛で

「風呂はどうする? 今の史ちゃんは、ひとりにさせたくないなあ。一緒に入る?」

「い、一緒には」

「『悠里』の姿になろうか」

「悠里、さんの?」

 久しぶりに聞く女性の悠里さん。
 なんだか懐かしくて、目を細める。

「風呂はダメだよなあ。胸も取れちゃうし」

「そう言えば、胸ってどうしていたんですか? 自然な柔らかさだったような」

 彼はわざとらしく、両腕を胸の前で覆い「えっち」と非難した。

「やっ。だって抱きついたとき、柔らかくて安心して眠ってしまって」

 ククッと笑う彼は自分の胸に手を当てて、「胸あった方がいいのかなあ」と真剣な口調で言う。

「いえ、あったら困ります。だって、あの」

 急に鮮明に昨日、自分が口付けた彼の胸元を思い出し、顔が熱くなる。
 ぶ厚い胸板ではないかもしれないけれど、程よい筋肉がついていて。
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