彼女は実は男で溺愛で

 ベッドの中で、彼に抱きしめられる。
 そして、彼は内緒話をするみたいに言った。

「俺の元に帰ってきてくれて、ありがとう」

 優しい彼の声に胸の奥が温かくなって、言葉にならない。

「おかえり。史ちゃん」

「ただいま。悠里さん」

 そっと、遠慮がちに触れた唇。
 私は、触れた唇に指を伸ばした。

「なに?」

「綺麗な、唇だなあって」

 悠里さんは、困惑しているような顔をさせ「眠れなくなるから、私語禁止」と、修学旅行の見回りの先生みたいな言葉を発した。

 クスリと笑うと、悠里さんと目を見合わせてクスクス笑った。

 そしてそのまま、悠里さんの胸に抱かれて眠りについた。
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