彼女は実は男で溺愛で

 悠里さんが好きだって伝えたいのに、それを上回るように『史ちゃんが好き』と伝えられてしまう。

 嬉しいけれど、私だって伝えたい。

「私だって、悠里さんのこと、好きなのに」

「そう? ありがとう。俺のは年季が違うから」

「年季?」

「あ、うん。その話はまた今度ね」

 誤魔化すように彼は起きて、寝室を出て行った。

 年季?
 だって私たちは4月の入社式の日に、初めて話したんじゃ。

 疑問符が浮かびつつ、悠里さんの方が先に好きになってくれたから、それを言いたかったのかなと、解釈をした。
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