彼女は実は男で溺愛で

「どこが初心者なんですか。知らない間に、脱がしていましたよ」

「褒められている?」

「褒めていません!」

「ハハ。俺、自分でも着るから、ね」

「え」

 目を点にして、それから「ああ、そうでした」とホッとする。

 彼がブラをしているところを想像すると、キャー!と思うのに、女性側の悠里さんを思い浮かべると、そうだよね、と納得してしまう。

「俺が『悠里さん』って、忘れ過ぎ」

 苦笑する彼が「今日は買い物デートしようか」と提案した。

「行きたいです!」

「久しぶりに『悠里さん』で会えるね」

 嬉しそうな悠里さんと対照的に、私の声は萎んでいく。

「あれ。嫌だった? 『悠里さん』じゃなくて俺が来て、ガッカリされた日もあったのにね」

 苦笑する彼に、慌てて訂正する。

「女性側の悠里さんが、嫌なわけじゃないんです。ただ、彼と買い物デートって夢だったので」
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