彼女は実は男で溺愛で

 悠里さんとは通路で別れ、帰路に就いた。

 アパートに帰ると、想像し得なかった入社初日の出来事を振り返る。

 悠里さんの美しさの陰に隠れ、忘れていたけれど。
 不意に思い出す『あなたたちは、西園グループの花嫁候補』という言葉。

 配属された総務課でも、華やかな社員。

 どこか、浮世離れした世界に感じる。

 本当にdecipherに、勤めていけるだろうかと不安が過ぎる。
 そこまで思って、再び悠里さんの優しい微笑みを思い出す。

 そしてスーツの上から手を当てて、プレゼントしてもらった下着に思いを馳せる。

 頑張ろうという気持ちが今一度湧き上がり、電話をかけた。

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