彼女は実は男で溺愛で

 悠里さんとボディメイク室を出て、駅に向かう。
 ずっと黙っている私に、悠里さんはなにも言わなかった。

 駅に着くと改めて話しかけられた。

「史ちゃん。負担に思っているのなら、ボディメイクやめてもいいんだよ」

 違う。ボディメイクが嫌なわけじゃない。

 前回からボディメイクした後に、様子がおかしいから心配をかけているんだ。
 わかっているのに、気持ちを浮上させられない。

「里穂も心配している。それで、今度の水曜」

 悠里さんの言葉を聞いて、抑えていた感情が爆発してしまった。
 彼がなにかを言おうとしているのに、最後まで聞けずに悲痛な声が漏れた。

「悠里さんは、女の人でいて」

 彼が息を飲んだのがわかっても、私はなにも言えなかった。

「そっか。うん。わかった」

 傷ついたような彼の声を聞いて、胸が痛い。
 けれど、男の悠里さんを誰にも見てほしくなかった。
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