彼女は実は男で溺愛で
浮世離れした世界
入社して数日。
私は、途方に暮れていた。
『decipher』はアパレル企業なだけあって、社員自体も華やかな人が多い。
私は意を決し、その華やかな人に声をかけた。
「あの、来客者名簿の入力方法を教わりたいのですが」
「ああ、それ、村岡さんに聞いて」
「は、はい」
一蹴されて撃沈。
全てにおいて門前払いで、仲良くなれる気配は感じられない。
教育担当は村岡さんだ。
村岡さんは地味目の風貌で、必要最小限の話しかしないため、取っつきにくい。
だから他の人ともコミニュケーションを図り、仲良くなれたらいいなという淡い期待はすぐに崩れ去った。
私は、こっち側の人間なんだ。