彼女は実は男で溺愛で

 ショックでぼんやりしていると、近くの会議室から出てきた男性が近づいて来た。
 どこか慌てているような男性は、追い立てるように言う。

「なにしてるの。君も蝶選びのメンバーだよね。早く会場入りして」

 蝶、選び?
 わけも分からぬまま、急かされるように別の会議室に入れられた。

 中に入ると、先ほどより一回り広い室内には、華やかな服装をした女性が数十人。
 テーブルが置かれ、オードブルや飲み物が用意されている。
 さながら、立食パーティーのような雰囲気だ。

 正面奥は小上がりになっており、壇上に司会者のような人がマイクを持っていた。

「西園グループ親睦会にお集まりいただき、ありがとうございます。存分に楽しまれていってください」

 和やかな雰囲気で女性たちは皿や、グラスを手にし始めた。

 どの女性も、華やかで色っぽい。
 スリットが深く入っていたり、背中が大胆に開いている。

 他にも、胸元がほとんどレースになっている妖艶なブラウスや、手触りの良さそうな光沢のある流れるようなワンピース。

 どう見ても、華やかな彼女たちに比べ、入社式を終えたスーツ姿の私は場違いだ。
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