彼女は実は男で溺愛で

 彼が私に触れると、何度も溶かされていた私はすぐに彼を受け入れた。

「怖かったら言って。止められる自信はないけれど」

 切なそうな顔つきで言われ、胸の奥がさざめく。
 欲情を我慢していた顔だと知るだけで、違った表情に見えて、こちらが困ってしまう。

 次第にいつも優しい彼の、激しい欲情があらわになり、恐怖よりも自分の奥底にも眠る淫らな感情が煽られる。

「悠里さんっ」

「もう、やめたい?」

 彼に理性までも削られ、恥ずかしい本音が漏れる。

「や、やめちゃヤダ。最後まで、して」

 私の声を聞いた彼は、今までにないほど激しく私を抱いた。

 意識が遠のきそうになり、懸命にしがみつく私に、彼の熱が注がれる。

 初めて聞く彼から漏れる声。
 彼の変化を感じ、体の力が抜ける。

 良かった。
 やっと本当の意味で彼と結ばれたんだ。

 心許ない私の体は、正体をなくしたようにベッドに沈んだ。
 彼は私に、慈しむようなキスを落とす。

「好きだよ。愛してる」

 抱き寄せられ、彼の胸元に顔を埋めた。
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