彼女は実は男で溺愛で

「女の方の悠里で襲うとは思わなかった」

 しみじみ言われ、目を丸くする。

「あの格好なら、いつ何時も女でいられるつもりだったよ」

「私は、悠里さんが女性の格好をしていても、もう女性には見えなくて」

「ん? 俺、女装ヘタクソになった?」

 笑わされ、頬を膨れさせる。

「いつだって女装の悠里さんは綺麗ですよ。女として負けているって思うくらい」

「負けるわけないよ」と、甘やかす言葉をかけ、悠里さんは私を抱き締め直し、髪を撫でる。

 甘い雰囲気の中、私はどうしようもない心の内を打ち明けた。

「ただ、他の人に、その、男性の悠里さんを見せたくないというか」

 悠里さんは動きを止め、まじまじと私を見る。

「呆れますよね。悠里さんを誰の目にも触れさせたくないんです」

 頬を緩ませた悠里さんが、私の鼻をかじって笑う。

「俺は史ちゃんだけしか見ていないよ」

「でも」

 再び押し付けられ、目を丸くする。

「こうなるのも、史ちゃんだけ。襲われたところで情けないことに、反応しなかったんだよ」

 里穂さんのセリフと一致して、胸の奥が痛い。
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