彼女は実は男で溺愛で

「あ、そういえば誕生日」

「ああ、うん。昨日? おとといか。うん」

「オフだったんですよね」

 私の指摘に、悠里さんは言いにくそうに口を開く。

「それは、うん、前に休日出勤したから、その代休にして。数日前に申請していたから、変更するのも、ね」

「ごめんなさい。知らなくて」

 幸せだと、少しでも感じて過ごしてほしかった。
 現実は、気まずい1日を過ごしただけだ。

「いいよ。1日遅れでプレゼントをもらったから」

「え、私、なにも」

 理解できずにいると、目を弓形にし悪巧みをしたような顔をする悠里さんが私の唇にキスをする。

「もらったというか、もらってもらったといえばいいかな。ひとつ大人にしてもらった」

 唇に指を当て、妖しくウィンクをする悠里さんが、なにを言いたいのかわかってしまって、顔が熱くなる。

 クククッと笑う悠里さんが、付け加えて言った。

「日を改めてデートしてね」

「望むところです」

 決闘をするような口ぶりに「勇ましいや」と、彼は笑った。
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