彼女は実は男で溺愛で

 悠里さんのアパートに着き、彼からのメールに気付く。

『宅配便が届いたら受け取っておいて』

 人の家にいて、受け取っていいのかな。

 サインは『市村』? それとも『染谷』?
 いやいや、そこは『市村』でしょう。
 偽ってどうするのよ。

 ひとりツッコミを済ませてから、なにか料理でも作って待っていた方がいいのかなと、冷蔵庫を開けて驚いた。
 誰かとパーティーでもしそうな準備が、冷蔵庫の中に入っていた。

 え? 誰と? 私と?
 というよりも、いつの間に?

 ずっと前のように思えるけれど、彼と別れこのアパートを出たのは今朝だ。
 突然、アパートに来たから、着替えをしに自分のアパートには戻ったけれど。

 私が帰って出社するまでの間に?
 嘘でしょ?

 だいたい誕生日の当人が準備するって、どういう。
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