彼女は実は男で溺愛で
インターホンが鳴り、確認すると「お届け物でーす」と明るい声がした。
玄関を開けると目の前に花束が。
「史乃さんにお届け物です。こちらにサインを」
ペンと紙を渡され、視界が歪む。
「なんて、書けばいいんですか」
涙が溢れ、言葉まで揺れる。
「『悠里さん大好き』がいいかなあ」
黒いジャンバーと帽子を目深に被っていた彼は、帽子のツバを上げ目尻を下げて言う。
「泣かないでよ」
「だって。私が誕生日なわけじゃないのに」
「うん」
花束はバラを中心に、彩りが華やかで綺麗だ。
「せっかくだから生けなきゃ」
涙を拭き、花束を抱く。
いい香りが、ふんわりと漂って私を包む。
「テーブルに飾って、ディナーにしよう」
「はい。あの」
「ん?」
私は彼の肩に手を置き、背伸びをして彼の頬に唇を寄せた。
「大好き、です」
目を見開いた彼が、耳を赤くさせる。