彼女は実は男で溺愛で
「今日はいるかな〜」
エレベーターに乗りひとりになると、つい心の声を漏らす。
悠里さんと会えるのを楽しみにしているけれど、毎日会えるわけではなかった。
ボディメイク室に入って里穂さんに「悠里、今日は仕事が忙しくてこれないって」と伝えられる日もある。
そもそも悠里さんは毎回、私のボディメイクが終わるのを試着室の前のカウンセリングルームと呼ばれる場所で待っている。
普段はここでボディメイクアドバイザーが体型の悩みを聞いて、それから試着室に移動するようだ。
私は里穂さんにしか会ったことはないけれど、アドバイザーは他にもいるらしい。
悠里さんに至っては、本当に待っているだけ。
自身が里穂さんにボディメイクをしてもらうわけでもない。
だから少し申し訳なくなる時もあるけれど、私自身、悠里さんに会いたくて「私だけで来られますよ」とは言い出せずにいる。