彼女は実は男で溺愛で

「今日はいるかな〜」

 エレベーターに乗りひとりになると、つい心の声を漏らす。

 悠里さんと会えるのを楽しみにしているけれど、毎日会えるわけではなかった。
 ボディメイク室に入って里穂さんに「悠里、今日は仕事が忙しくてこれないって」と伝えられる日もある。

 そもそも悠里さんは毎回、私のボディメイクが終わるのを試着室の前のカウンセリングルームと呼ばれる場所で待っている。

 普段はここでボディメイクアドバイザーが体型の悩みを聞いて、それから試着室に移動するようだ。
 私は里穂さんにしか会ったことはないけれど、アドバイザーは他にもいるらしい。

 悠里さんに至っては、本当に待っているだけ。
 自身が里穂さんにボディメイクをしてもらうわけでもない。

 だから少し申し訳なくなる時もあるけれど、私自身、悠里さんに会いたくて「私だけで来られますよ」とは言い出せずにいる。
< 33 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop