彼女は実は男で溺愛で

「俺はあんなもの、必要ないって、祖父に直談判もした」

「あんなものって」

「親睦会。龍臣にも、今このご時世で愛人かよって、何度も言い争っている」

「でも」

「わかった、今までの話は忘れて。俺は、入社式で会った史ちゃんに惹かれた。それでいいよ」

 投げやりに言う悠里さんへ、どう返答すればいいのか分からない。

「でも、だって、だから買ってくださるんでしょう?」

「なにが」

 不機嫌な彼はなんだか怖くて、おずおずと告げる。

「だって、ずっともらい過ぎています。あの下着は入社祝いに後輩に軽々しく買う金額じゃないですし、服もたくさん。下着はその後も二度目も買っていただいて」

「それは」

「西園グループの方だから、資産があって」

「史ちゃん」

 低い声に私は体を揺らし、彼を見つめた。

「ごめん。少し普通とは、感覚がズレていたかもしれない。けれど、お金はある。それを自分の好きに使って、なにが悪い」

 私は頭を左右に振って、相容れない考えを示す。

「私にはわからないです」
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