彼女は実は男で溺愛で

「大人可愛いをターゲットに。それで俺が考えたものを decipher ブランドのトレードマークにするために、デザイン料みたいなものが発生する仕組みにした」

「デザイン料、ですか」

「そう。もちろん、俺だけじゃなく別の人が考えたデザインが流行れば、その人のところに入る。そのお陰で発案する社員は増えたし、俺の考えたものは未だに利益を生み出している」

「すごい、ですね」

「史ちゃんのお陰なんだよ」

「それはさすがに、恐れ多いです」

「あの子なら、どう言うかなって考えたり、あの子ならどんなものが似合うかなって。俺にとって女の子といえば、その頃からずっと史ちゃんだった」

 彼は当時を思い出すように、懐かしそうに目を細めて語る。
 そんな風に思っていてくれたのだと思うと、胸が温かくなった。

「だから買ったものは妄想料だと思って、受け取ってよ」

「妄想って言うと、なんだか卑猥です」

「そんなわけ、ないよ。たぶん」

 あからさまに目を逸らした彼に「嘘! 嘘ですよね!」と問いただす。

「冗談冗談。俺にとって、史ちゃんは綺麗な思い出だったからね」

 そう言われるのは、言われるので、どこか気恥ずかしい思いがした。
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