彼女は実は男で溺愛で
彼女の向こう側
彼はひと呼吸置いてから、私へ質問した。
「史ちゃんは、お母さんとどうするの」
「どう、と言われても」
改めて聞かれ、言葉に詰まる。
考えたくなくて、敢えて考えないようにしていた。
私は、重い口を開いて話す。
「母は今年で43歳で」
「若いね。ああ、でも赤ちゃんを産むのなら、のんびりしていられないのかな。史ちゃんは反対なの?」
まさかの赤ちゃん。
母はどう思っているのだろう。
穏やかな義理の父。
私の成人と就職まで待って、再婚した2人。
想い合っているからこそ、再婚したのだろう。
そこには2回目だからとか、それぞれに子どもがいるからとか、年齢とかは関係ない。
そうだとしたら、愛している人との子どもがほしいと思うのが人情なのだろうか。
「もう一度、話してきたら。日帰りできるのでしょう?」
「それは、そう、ですね」
「俺で良ければ、ここに帰っておいで。話し相手にはなれるよ」
優しい彼の言葉は、今までと変わらなかった。