彼女は実は男で溺愛で
「言っておくが、お前を排除すれば悠里がこちらに戻ってくるのなら、そうするまでだ。俺を甘く見ないことだな」
伝票を持ち、立ち上がる龍臣さんは鋭い視線を投げつける。
「西園悠里があんなボロアパートに住み、女の腐ったような生活をしているうちは、俺は認めない」
勝手に現れ、勝手に去っていく彼の後ろ姿を呆然と見つめる。
ボロアパートって、私にしたら充分広くて素敵だ。
でも、そうか。
彼が『西園悠里』として、生きていたとしたら。
セキュリティが厳重な、コンシェルジュ付きの高級マンションで暮らしているのかもしれない。
不意に、女性の姿をしていた悠里さんを思い出す。
「彼は私が気に入らないのよ」
そう言った、悠里さんの憂いに帯びた眼差し。
悠里さんを想って、胸が痛くなった。