彼女は実は男で溺愛で

 お昼休みになり、ぼんやりとコンビニ弁当をつまむ。

「今度は色ボケ? 忙しい人ね」

 村岡さんにチクリと言われ「いえ。あの、すみません」と謝った。
 村岡さんは、いつも通りの口調で言う。

「プライベートでなにかあっても、一応は仕事でミスしないみたいだから、まあいいんじゃない」

「またまた〜。村岡さん、心配していたんだよ。市村さん、大丈夫かしらって」

 柚羽がニマニマして言うと、村岡さんは不機嫌そうに言った。

「そんなわけないじゃない。市村さんが落ち込んでいると、職場の雰囲気が悪くなるから困るだけ」

「素直じゃないんだから」

 柚羽にそう言われ、村岡さんは居心地の悪そうな顔をしている。
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