彼女は実は男で溺愛で
「まあ、この部分だけの修理なら、そんなにかからないと思うよ。でも、その間、ないのは困るでしょう? あと1着しかないよね」
「修理はどのくらいかかりますか」
「一週間かからないかなあ」
一週間も洗わずに同じ下着は、さすがに無理がある。
「デート用で買った普通のタイプのブラと、交互で乗り切るしかないね」
「はい」
ロングブラに慣れて、普通のブラは心許ないけれど、そうも言っていられない。
「悠里の金銭感覚の違いは、大目に見てやってよ。悠里にとって、一世一代の恋なんだから、浮かれているのよ」
浮かれて、か。
浮かれ方が庶民的だったら、素直に喜べたのになあと、贅沢な悩みを思い浮かべる。
「それに」
「それに?」
「悠里が仕事面で敏腕だって言われているのは、知っているでしょう?」
「え、ええ。はい」
「悠里がほしいと思って、逃したものなんてないんじゃないかな」
なんとなく恐ろしくなっていると「なーんてね」と、里穂さんは明るく言った。