彼女は実は男で溺愛で

「どうして悠里さんって、全部言ってしまうんですか」

「なにが?」

「黙っていたら、いいのに。「アルバイトしていた時に会ったよね。すごい偶然。再会できるなんて、これは運命だね」って、囁いてくださったら」

 私の意見を聞いて、悠里さんは乾いた笑いをこぼす。

「詐欺師には、なれそうにないね」

「私、悠里さんになら、騙されてもいいかなって思ったのに」

「うん。俺も。史ちゃんが悪い女なら、イチコロだ」

 鼻の頭を擦り付け、彼は私にキスをする。

「こんな風に、また肌を重ねられるとは思わなかった。それとも本当は悪い女で、今から強請られるのかな。弱みも握られているし」

 彼はククッと喉を鳴らす。

「そうですよ。今から脅すので、覚悟してください」

「なんて脅されるの」

 意地悪な顔で試すように言われ、言い淀む。

「えっと、弱点を人に言われたくなかったら、好きだよって、たくさん言ってください」

「ハハッ。それだけ? 本当に、俺を陥れる罠かと思うよ」

「どうしてですか!」

 憤慨したように詰め寄ると、彼は言う。
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