彼女は実は男で溺愛で
「こうして、史ちゃんとベッドにいる状況自体が信じられないから、かな。肌を重ねている時も、これ夢オチかなって思ったりした」
「ずいぶんリアルな夢ですね」
「うん。これが夢なら、俺、夢の世界で屍になるまで生きていたい」
冗談に思えない口調で言われ、心配になる。
「悠里さん、お疲れなんじゃないですか。お休みになられた方が」
「寝たら夢オチでしょ。夢オチじゃなくても、史ちゃんといるとジェットコースターみたいで」
恨めしげな顔を向けられ、おずおずと質問をする。
「楽しいからってわけじゃ、なさそうですね」
彼は、含みを持たせるような言葉を言う。
「俺、本気で自分は正真正銘の男で、女にはなれないと思ったよ」
「どうしてですか」
「女の心は秋の空ってやつ。移ろいやすくて全然つかめない」
彼は謝る隙も与えてくれず、続ける。
「完全に溶け合って、混ざり合えたと思って。心を許したのが、仇となったのかな。俺だって西園の話はするつもりはなかった。話して拒否されて」
彼は西園だと、言うつもりはなかったと言っていた。
彼の誠実さに、不誠実で返してしまったような気がして、今さらだけれど申し訳なくて居た堪れない。