彼女は実は男で溺愛で

 黙る私に、彼は言った。

「非難するような言い方だったかな。俺は史ちゃんの前では、自然体でいられるんだ。言い過ぎたのなら、謝るよ」

 謙虚な彼に私は首を振る。

「だから女装する必要もなくなって」

「悠里さん」

 女性の姿でいると、心の均衡を保てると言っていたのに、私がその重責を担えているのだろうか。

「また女の人でいてって言われる?」

 彼から、からかうように言われ首を振る。

「それに俺も、いい加減、自分と、『西園』とも向き合おうと思って」

 決意したように言う彼の体に、擦り寄って顔を埋める。
 固い顔をしていた悠里さんは、ふんわりと笑った。
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