彼女は実は男で溺愛で

「女になる必要がないと言いつつ、行きつ戻りつになるとは思う。もしも突然女の格好で現れても、驚かないでね」

 私はもう一度首を振り、彼の体におでこを擦り付け「じゃ女性の悠里さんにキスしても、驚かないでくださいね」とお願いをした。

 すると彼は「それは困ったね。早急に男に戻りたくなりそうだ」と苦笑した。

「そもそも、向こうのビルに男として現れたら、認めてもらえないかもしれない」

 ハハと力なく笑う彼に「もう認められていますよ。男性でも女性でもない悠里さんとして」そう言ってあげたい気持ちをグッと抑える。

 きっと、彼はいつか自分で知る時が来るから。

「すみませんでした。ふらふらして、はっきりしなくて」

「いいよ。惚れた弱みだ」

 彼は笑みを浮かべ、私にキスをする。

「だから、寝かせてあげられないよ。夢ではないと実感したい」

 彼は体を抱き寄せ、妖しく触れる。
 私は吐息を漏らしながら、彼にしがみついた。
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