彼女は実は男で溺愛で
 
「あの」

 声をかけられ振り向くと、そこには長身の女性が立っていた。
 153センチの小柄な私は、見上げるように彼女を見た。

 モデル体型のスラッとしたその人は、170センチはありそうだ。

 明るめにカラーリングされた髪はアップにされ、首元にはパールのネックレス。
 肌の白さに合う薄いベージュのワンピースが、彼女の儚げな雰囲気を引き立てている。

 淡い白の中で、鮮やかな赤いルージュが目を引く。
 きつい色ではないのに、彼女の白さの中でただ一点の紅は、そこはかとない色気を感じさせた。

「手違いで、ここに紛れてしまったの?」

 落ち着いた少し低めの声が、彼女の美しい唇から発せられ、ついうっとり聞き入った。

「とにかく、こっそり抜け出しましょう」

 手を引かれ、ドキリとする。
 指先まで綺麗な彼女の手の中で、ずんぐりむっくりな私の小さな手が、申し訳なさそうに縮こまった。
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