彼女は実は男で溺愛で

「ヤダ。怖い顔しないで。イジメのターゲットを探していたとかじゃないの。この会社、特殊でしょう? だからお友達になれる人は少なそうだから」

 確かに特殊そうだと数日で思った。
 未だに慣れない。

 彼女はよほど話し相手が欲しかったようで、話し続ける。

「だいたいは、お嬢様が結婚相手を探しに、結婚前の社会勉強も兼ねて入社する人が大半で。私も親に勧められて、ここを受けた口だし」

「えっ。じゃ平林さんも、お嬢様?」

「やだ〜。柚羽って呼んでよ。私も史乃って呼ばせてもらうから」

「え、あ、うん。それで、柚羽もお嬢様って、こと?」

「ええ、まあ、そうなるかな。私は好きな人くらい自分で見つけたいって思っていたけれど、ここしか内定もらえなくて仕方なく」

 では、他の新入社員どころか、社員ほとんどがどこかのご令嬢ということになる。

「男性の方は西園グループの親族か、息がかかった人が多いらしくて。もちろん一般で入る人もいるみたいだけれど」
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