彼女は実は男で溺愛で

 入社初日。新入社員が集められ、上司の人が言っていた内容が蘇る。

「あなたたちは、西園グループの花嫁候補なのですから」

 これは、入社するお嬢様方には周知の事実だったのだ。

 それにしても、時代錯誤じゃないだろうか。
 会社全体で西園グループの男性に、花嫁をあてがうようなやり方。

「特に本部長の西園龍臣さん。西園グループの後継者候補ってだけあって、みんな狙っているから」

「狙ってって」

 どこぞのハンターですか?
 それとも命を狙うスナイパー?

「だって彼に気に入られれば、将来安泰じゃない。例え愛人でも遊んで暮らせるわ」

 愛人でも。
 私には、世界が違い過ぎて頭痛がする。

「他にも西園グループの有力者が何人もいるみたいで、「捕まえるのなら『西園』」を合言葉にしている人はいくらでもいると思うよ」

 私、なにも知らずに、とんでもない会社に入ってしまったのでは。

「あっ、もうお昼休み終わりそう。また明日、お昼は一緒に食べようね」

「う、うん」

 別世界の話を聞くような内容に圧倒され、ぼんやりと立ち尽くした。
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