彼女は実は男で溺愛で
会場から離れ、小さな休憩室に入る。
手を離されると、注意を受けた。
「新入社員でしょ? ダメじゃない。あんな
ところにいたら」
「すみません」
小さくなって、こうべを垂れると、彼女はふんわりと微笑んだ。
「驚いたでしょう。目が点になっていたから、知らずに入ってしまったのねって、すぐに分かったわ」
優しい声に緊張が緩み、本音をこぼす。
「はい。私には場違いで。皆さんすごく華やかでしたし」
彼女の視線が私の頭のてっぺんから爪先へと動いて、居た堪れない。
「そうね。入社式とは言え、確かに少し地味だわ」
うわ、ハッキリ言われた。
分かってはいるけれど、初対面の美人に面と向かって言われると少々ショックだ。