彼女は実は男で溺愛で

 いつの間にか、どこからか戻ってきていた村岡さんが冷めた視線を向けていた。

「お昼休み終わるから、席に戻って」

「あ、はい」

 慌てて彼女の後に続く。
 席に着いた彼女は、小さな声で忠告とも取れる言葉を発した。

「会社は仕事をしに来る場所よ」

「はい」

「馴れ合って、痛い目を見ないことね」

 これには絶句して、隣の村岡さんの顔をまじまじと見つめた。
 村岡さんはこちらを見ようともせず、パソコンの画面から目を離さない。

 どういう意味か問いかけられず、私も残りの仕事に取り掛かった。

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