彼女は実は男で溺愛で

 やっぱり彼は、悠里さんの恋人なのかな。
 恋人に付き纏っているチビが、気に入らなかったのかな。

 涙が出そうになりながら、壁に手をついて立ち上がる。

 どんな理由だろうと、悠里さんを待たせるわけにはいかない。
 服を選んでくれると言った彼女の厚意を、無下にしたくない。

 気乗りしなかった約束だったけれど、どこからか湧き上がった使命感から待ち合わせ場所に向かう。

 そして、悠里さんに聞こうと心に決めた。

 悠里さんの恋人は西園さんですか?
 彼は悠里さんが私と会っているのを、よく思っていないのではないですか?

 それでもし迷惑だとしたら、今までの厚意に心からお礼を言って会うのをやめよう。
 そう決意すると、心が軽くなって、少しだけ寂しくなった。
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