彼女は実は男で溺愛で
生まれてこのかた、恋人がいたことはない。
けれど、たった今、触れてしまったものが、女性にはないものだという事実は、私にも分かってしまった。
気まずそうに顔を背け、口元を片手で覆っている悠里さんを見て、急にある一言を思い出した。
そして、慌てて頭を下げる。
「ご、ごめんなさい!」
「え」
悠里さんが呆気に取られた顔をしていても、私は構わず続けた。
「前に襲われかけたって。それは勝手に男性に襲われたんだって思っていたんですけれど、それって女性だったんじゃ」
「それが?」
ああ、やっぱり。
そう思って、続ける。
「嫌な思いを、蘇らせたんじゃないですか?」
目を見開いた悠里さんが、カタコトに言葉を発する。
「第一声が、そこ?」
悠里さんは、膝を立てている自身の脚に顔を埋れさせ、打ち明ける。
「襲われかけたのは、男も女も」
「え」
衝撃の事実に声を失う。