彼女は実は男で溺愛で
「そんなことより、気持ち悪くないの」
「え」
「悲鳴を上げて、逃げるべきじゃない?」
指を指され、自分を顧みればあられもない姿。
思わず体を両手で隠す。
「俺はどうせここから動けないから、身支度して帰りな」
俺という悠里さんが、私との間に壁を作ったのが分かった。
私は震える手で荷物を集める。
「服、持って帰りなよ。似合っていたのは本当だから」
「じゃ代金」
「いいよ。嫌な思いさせた迷惑料」
「嫌だ、なんて」
私は小さく呟き、お財布の中身を全部出して、その場に置いた。
「これじゃ足りないと思うので、一番最初に着た服だけもらっていきます」
悠里さんはなにも言わない。