彼女は実は男で溺愛で
「私、悠里さんの性別がなんであろうと、憧れの先輩には変わりないです」
なにを言っても、もう悠里さんは私を見てくれない。
それでも私は言葉を重ねた。
「それに、不用意に私が、その、触ってしまったせいで、こちらこそ不快な思いをさせて、すみませんでした」
謝りの言葉を言い終えると、聞いているか分からない悠里さんに告げる。
「着替えないと帰れないので、もう一度、試着室を借りますね」
頭を下げ、着てきた服を持って試着室に入った。
そして着替えを済ませ試着室を出ると、悠里さんはいなかった。
きっと、もう、二度と会えない。
寂しくて、涙で目の前が歪む。
私が、なにをしたっていうの?
ひどい1日に、誰に文句を言えばいいのか、声を上げて泣いた。