彼女は実は男で溺愛で
彼女と彼
次の日は、悠里さんに選んでもらった服を着て、出社した。
ロッカーは、怖ろしくて開けていない。
泣き腫らした目を見て、村岡さんは小さくため息を吐いた。
温めたり冷やしたりしたけれど、あまり大差はない。
イジメに遭ったせいだと思われていた方が、心が軽い気がしていた。
「市村さん。ちょっと」
課長に呼ばれ、課長の席まで行く。
課長の隣には、スラッとした男性が立っていた。
「最近、市村さんに販売促進課の手伝いを多くやってもらっているから、直接仕事を頼みたいと依頼があってね」
「はい」
「こちら、染谷くんだ。今までの仕事もほとんどが彼の仕事だったから。産休に入った社員の代わりの者が見つかるまで、市村さんが彼の直属で仕事をしてほしい」
噂の染谷さん。
例え、想像通りの好青年だとしても、もう彼の話題を悠里さんとする機会はない。
寂しさを覚えながら、顔を上げ、染谷さんの顔を見上げる。