彼女は実は男で溺愛で
私は疑問に思った内容を口にした。
「悠里さんと染谷さんは人格が違うとか、その、そういうわけではないのですか」
「多重人格障害みたいな、病気ではないわ。きちんと認識はあるし、私の心はひとつよ」
それは、そうなのかもしれない。
悠里さん側でも「俺」と言ったりしていたし、言葉遣いが男性寄りになる時もあった。
「それじゃ、どうして『悠里』に直接伝えてあげて。だなんて」
私の指摘に、悠里さんは困ったように笑う。
「そうよね。そこは自分でも、上手く説明できないの。あっちの染谷悠里は仕事上の姿で、こっちの方が自然体なのかな」
「そう、なんですね」
男性側の染谷さんとは、仕事の面でしか関わっていないから、プライベートの彼の姿は想像するのが難しい。
と、言うよりも悠里さんだって、ミステリアスで、想像できない。
「あ、の。すごくデリケートな質問なので、答えにくかったら答えなくていいので、聞くだけ聞いてもいいですか」
「なに? 怖いな」
口の端に笑みを浮かべつつも、神妙な顔をした悠里さんに問いかける。