初恋してます。
・第六章
8月8日、晴天。
二階の私の部屋の窓から蓮くん一家が外出をする様子を眺めている。
目をぎゅっと瞑りたくなるぐらい太陽の日差しが強く、そして蝉達が激しく鳴いている。
小学生の頃、良く幼馴染三人で虫取り網と虫かごを持って自宅から近くの木々が茂る公園まで蝉を捕まえに行っていたことを思い出した。
蝉を捕まえるのが一番上手だったのは蓮くんだった。
私はミンミンと鳴く蝉と目が合っただけでも怖くて身をすくめて全く触ることすら出来なかった。
お姉ちゃんは虫かごから蝉が逃げないように見張る係だった。
出会ったばかりの蓮くんは物静かで引込思案な性格だったけれども、
次第に私達と打ち解けて一緒に遊ぶようになってからは明るく活発な性格へと変わるようになった。
蓮くんと私達姉妹は昔からずっと大が付くぐらいの本当に仲良しで。
もし知らない人達が私達を見かけたら三人は本当に血の繋がった兄弟なんじゃないかと思うぐらい、いつも一緒に過ごすことが多かった。
だから、もちろん蓮くんのことなら、知らないことなんて何1つないと私もお姉ちゃんも当然自信を持って思っていた。
そして、蓮くんのことは勝手に何でも分かっているつもりでいていた。
しかし、それは大間違いだと気付かされた。
ずっと一緒に過ごしていたけれど、今まで全然知らないことが実は一つあったのだった。