初恋してます。
・第十章
実は、私は今まであることをずっと胸の中に秘めていることがある。
そして、まだ誰にもそのことを話したことがない。
なぜなら、周りから何を言ってるの?!なんて驚いた顔をされて更にバカにされることが怖くて嫌だったからだ。
時折、突然ふとした時に急に思い出す不思議な私の遠い記憶。
それは、ずいぶん昔から当たり前のように何度も何度も頭の中で繰り返される。
まるで、私の体に忘れてはいけない大切なことなんだよと強く植え付けられているようで、はたまたしっかりと教えられているような感じがして。
脳の片隅にある灯し火のようなほんの小さな私の不思議な記憶。
それは、まだ生まれてくる前の頃の私の薄い記憶。
暖かい温もり、優しいお母さんの声がけ、そして柔らかいジャスミンの花のような良い香り。
真綿に包まれているように凄く心地が良くて。
間違いなく、私のお母さんだ。
だけど……、でもそれは絶対に今の私のお母さんじゃない。
私が今のお母さんから生まれる前の微かに覚えている記憶。
なんだろう、……この不思議な記憶。
なんなの、この記憶は──。
それじゃあ、このお母さんは誰のお母さんなんだろう。
いったい、いったい、この居心地の良いお母さんは、誰──?
私には、もう一人確かにお母さんがいるはずなのに……。
それが、誰なのか、わからない。
ずっと、疑問に思っていた。
顔を確かめようとするけれど、肝心な部分にいつも白く靄がかかっていてわからないのだ。