初恋してます。
私の目の先に見える物。



温かい、大きな水たまり、……真っ赤、……私の血だ。



………嘘っ、こ……怖い。



横たわりぼんやりと薄れゆく意識の私の周りには気づけば直ぐに大勢の人集りができていた。



「おいっ、彩歌!」



もう何も見えない、蓮くんの声が耳元で聞こえた。



「れ、蓮くん………──」



救急車が近づいてくる音がする。



蓮くんが無事で良かった、事故に合ったのが本当に私だけで良かった……。



私の体の力がスッーと徐々に徐々に抜けていくのを感じる……。



生きたい、もっと生きたい──。



生きたいという強い願望を抱いていても、もう時の流れにただ今は身を任せるしか手立てがなくて。



──私の理想は年を取りつくして、花が枯れるように最期を迎えたかった。



願わくは、大好きな人の側で……。



体はなんとか必死に私の気持ちにこたえようとしているのに、タイムリミットが段々と近づいてきているのがこの身を通してひしひしと分かる。



私の呼吸が段々ゆっくりと浅い呼吸に変わってきた、まるで時間を惜しむよう……。



全てと“さよなら”をする準備が始まろうとしている。



……どうして?



……どうして。

< 86 / 104 >

この作品をシェア

pagetop