初恋してます。
・第十三章
しかし、良く私の所へ頻繁に会いに来てくれる人がいるのだけれど。
その人だけは、沢山の写真を見ても、日記を読み返しても、どうしてだか未だに全然思い出せなくて。
私はその人のことを日記にあまり書いていないようだった。
それほどその人とは深い関わりがないっていうことなのだろうか──。
それとも、日記に書くと何か不都合なことでもあったのだろうか。
お姉ちゃんが事故当初からの詳しい話をしてくれた。
その人はずっと私に寄り添っていてくれた人なのに……、事故の時も、救急車の中でも、
病院の中でもずっと私の手を握り祈るように私の名前を呼び続けてくれていた人なのに──、なのに思い出せない。
付き添いの看護士さんが別の看護士さんとひそひそと話をしている声が聞こえてきた、
きっと私がベッドでぐっすりと眠っていると思ったんだろう。
「いつもあの子に会いに来る時、にこやかにしているけれど。思い出してもらえないみたいね……。
この間、病院の屋上で空を見上げて静かに泣いているの姿を初めて見たのよ『どうして、また俺じゃないんだよ……』って」
「かわいそうにね、……思い出してもらえないなんて──。しかし、『どうして、また俺じゃないんだよ……』って、どういうことなのかしらね……?」
「……さぁ、意味がわからないわ。ほらぁ、見て!来た、来た!今日も、またあの子に会いに来たわよ」
「あらぁ、本当。……まめよね、感心するわ」
「あっ、いけない!こんな時間よっ。ナースステーションに私達は早く戻らないと……──」