Get over it.
俺の考えは無駄だったのではと思い始めていた頃、俺が居場所にしている
図書室に地味な女がよく来るようになった。

今年入学した1年らしい女。

図書室に来た時だけ、短い会話を交わすそれだけの関係が続く。

名前が「玲」と知ったのは、初めて会ってから1か月経った頃だった。

玲はイジメにあっているらしかった。

でも、玲はそんな事を俺には一言も言わない。


ある時、校舎の裏で玲が数人の女に囲まれている場面に遭遇した。

罵声を浴びせる女達の中で、玲は凛としていた。

言い返すこともしないが、背筋を真直ぐに伸ばし自分は間違ってはいないと
全身がそう語っているような、そんな姿だった。

俺はその姿に・・・見惚れてしまった。

『こいつだ!俺が探し求めていたものは・・・玲だ!』

俺の心がそう言っていた。

それからの俺は、玲の事を調べた。両親、義妹、ガーディアン・・・

その中で、玲の容姿は偽りだとも知った。俺と同じ。


図書室の中で、俺と玲の気持ちが近づいていくのを感じた。

素の自分で話す玲。

近づく俺達の距離の中、玲の様子がいつもと違う事に気づく。

「玲、何があった?」

「・・・何もないよ。」

「俺には隠さず何もかも話せよ。俺は何があっても玲の味方だ。」

俺の言葉に玲の瞳から涙がこぼれた。

玲の口から語られたのは、最近できたお姫様の事だった。

ガーディアンの奴らはどう思っていたのか知らないが、玲は大事な居場所
と思っていた場所。だから・・離れたくなかっただけ・・・。

その日は、何かあったら俺に言えといって別れた。



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